痰が絡んだ際、誰もが無意識に行う「ンフンフ」という強い咳払い。実はこれこそが、症状を慢性化させる最大のトラップであることは一般にあまり知られていません。
強い咳払いを行う瞬間、左右の声帯は激しい勢いで衝突します。その物理的衝撃は、時速数十キロメートルで壁に打ち付けられるのに匹敵する摩擦を生み出します。過度な咳払いを繰り返すと、声帯粘膜が微小な出血や浮腫を起こし、それを保護しようとして気管支や咽頭がさらに多量の分泌液を分泌します。「痰が気になるから咳払いをする」行為が、「新たな痰を作り出す刺激」となって返ってくるという皮肉な悪循環が成立してしまうのです。
また、ネット上で散見される「殺菌力の強いイソジンなどのポビドンヨードうがい薬で毎日喉を消毒すれば治る」という言説も危険な誤解です。健康な喉には、病原菌の定着を防ぐ常在菌叢が存在します。強力な消毒薬を連日使い続けると、守るべき常在菌まで死滅し、喉のバリア機能が崩壊して過乾燥を招きます。日常的な喉のケアとしては、体液に近い浸透圧を持つ生理食塩水や、ぬるま湯によるシンプルなうがいこそが、粘膜組織を保護する最善手です。