治療を継続している当事者たちのコミュニティや取材ログから見えてくるのは、肉体改造と精神構造のパラダイムシフトです。特に「筋肉」と「メンタル」の2軸において、患者たちは日常の激変を口にします。
筋力トレーニングを日課とする40代男性たちの証言では、筋肉のパンプ感や回復速度が劇的に向上することが報告されています。テストステロンは筋タンパク質合成を直接促進し、異化作用(カタボリック)を司るコルチゾールの働きを抑制します。そのため、加齢とともに重荷となっていた週数回のトレーニング疲労が残りにくくなり、「ベンチプレスの重量が停滞期を脱して伸びた」「腹周りの内臓脂肪が落ちて引き締まった」という物理的な変貌を短期間で体感する人が目立ちます。
しかし、当事者たちが筋肉以上に人生への影響として語るのが「メンタルの劇的変化」です。男性ホルモンは脳の扁桃体や前頭前皮質に作用し、意欲、自己肯定感、リスクを取る勇気を司るドーパミン受容体を刺激します。都内の金融機関に勤務するB氏(48歳)は、取材に対してこう述懐しています。
「かつては理不尽な取引先からの要求に怯え、夜中に何度も目が覚めて冷や汗を流していました。注射を始めて2ヶ月ほど経った頃、ふと『断るべきものは論理的に断ればいいだけだ』と腹の底から静かな自信が湧いてきたのです。感情的に怒るのではなく、揺るがない軸ができた感覚でした」
一方で、ネット上の評判やコミュニティのリアルな反応を精査すると、メンタル変化には好ましい側面ばかりではないことも浮き彫りになります。急激な血中濃度の上昇期には、些細な渋滞や他人の言動に対して過度なイライラや攻撃性を覚える人が一定数存在します。「以前より短気になり、家族に声を荒らげてしまった」「集中力が高まりすぎて夜眠れなくなった」という声もあり、精神の高揚と攻撃性のコントロールは表裏一体の課題といえます。