隔離を行う際、水槽から回収したすべての卵が無事に孵化するわけではありません。回収した卵の中には、受精に成功して細胞分裂を繰り返している「有精卵」と、受精しなかった、あるいは途中で発生が停止した「無精卵」が混在しています。この2つを選別せずに同じ容器へ入れておくと、無精卵が腐敗して水カビの温床となり、周囲の元気な有精卵まで巻き込んで死滅させてしまいます。
選別の基準は極めて明快であり、視覚的な透明度と物理的な弾力性によって誰でも確実に判別できます。
- 有精卵の特徴:全体に透き通った琥珀色や淡い黄色を帯びており、濁りがありません。最大の特徴は外膜の強固さです。人間の指先で強めにつまんで転がしても、決して潰れない硬度と弾力を持っています。数日経過すると内部にキラキラとした油球が見え始め、やがて黒い一対の眼が確認できるようになります。
- 無精卵の特徴:産卵直後から白く濁っており、全体が乳白色や不透明な白色に変色しています。指でつまむと驚くほど簡単にあっけなく破裂し、中から白っぽい液体が流れ出します。死んだ有機物であるため、早ければ24時間以内に綿毛のような水カビ(ミズカビ科の菌糸)に覆われます。
人工産卵床から卵を採取する実践手順
市販のセリアやダイソーなどの100円ショップで手に入るセリアクリーナー型産卵床や、研磨剤不使用タワシを用いた自作の人工産卵床を使用している場合、卵の採取にはコツが必要です。産卵床を水から引き上げたら、付着している卵を指の腹で優しく撫でるようにしてつまみ取ります。
この際、卵の表面には「付着糸(ふちゃくし)」と呼ばれる粘着性の細い糸が無数に絡みついています。卵同士がブドウの房のようにくっついたまま放置すると、1つの卵がカビた際に周囲へ一気に菌糸が燃え移るため、指のひらや濡らしたキッチンペーパーの上で軽く転がし、付着糸をちぎって「1粒ずつバラバラ」に解離させることが不可欠です。有精卵であれば、指で転がす程度の力で潰れる心配はまったくありません。