熱海ふふを予約するにあたり、最も誤解してはならない構造的な事実があります。それは「宿の敷地内から熱海の海や花火大会の会場を見下ろすことはできない」という点です。
「熱海=オーシャンビューのリゾート温泉地」という強烈な固定観念を抱いたままこの宿を訪れた旅行者は、到着時に少なからず驚きを覚えます。熱海ふふが位置するのは、熱海駅から車で約10分、海岸線から山側へと上がった住宅や別荘が点在する「初川の渓流沿い」の谷あいです。
この立地を選定した開発思想は明確です。海岸沿いの大型温泉ホテルが提供する「喧騒や夜景の華やかさ」をあえて捨て去り、「木々の緑と川のせせらぎに囲まれた、徹底的に外部の視線を遮断するプライベートシェルター」を創出することにあります。窓の外に広がるのは青い海ではなく、手入れされた竹林やモミジ、常緑樹の葉陰です。
「部屋から水平線を眺めたい」「部屋の露天風呂に入りながら熱海海上花火大会を見たい」と願う旅行者にとって、熱海ふふはミスマッチとなります。逆に、「観光客の往来から完全に隔絶され、日常の認知的負荷を極限までゼロに近づけたい」と願う多忙な都市生活者にとっては、この閉鎖的ともいえる緑の隠れ家こそが、他では得難い安らぎをもたらす空間となります。