ネット空間には、追い詰められた親をさらに苦しめる誤った言説が散見されます。取材を通じて判明した、現場で見落とされがちな2大誤解を解体します。
誤解1:「泣き止まないのは母乳不足が原因」という思い込み
頻回授乳と母乳不足の不安は密接に結びついています。「飲んでも飲んでも欲しがる=自分の母乳が出ていない」と短絡的に結論づけ、焦って粉ミルクを過剰に足してしまうケースが目立ちます。しかし、生後3週目の頻回授乳は、赤ちゃんの側が「今後必要になる母乳量を増やすために乳腺へ送っている増産オーダー」です。赤ちゃんが何度も吸う刺激によってプロラクチン(母乳分泌ホルモン)が大量に放出されます。日増体重が25〜30g以上増加し、オムツが1日6回以上しっかり濡れていれば、母乳量は足りています。過剰なミルク補給は、未熟な胃腸に過度な負担をかけ、消化不良による更なる激痛とギャン泣きを引き起こす盲点となり得ます。
誤解2:「抱っこばかりしていると抱き癖がつく」という昭和の神話
親世代や一部の古い育児書から「すぐに抱き上げると抱き癖がついて後で苦労する」と忠告され、泣いている赤ちゃんを放置して葛藤するケースがあります。しかし現代の小児神経科学において、新生児期〜乳児初期に抱き癖がつくという概念は完全に否定されています。抱っこによって得られる肌の温もり(オキシトシンの分泌)と心音の振動は、胎内環境を再現し、赤ちゃんの副交感神経を優位にして過度なストレスホルモン(コルチゾール)の上昇を抑えます。この時期の迅速なスキンシップこそが、将来の自立を支える「安全基地(基本的信頼感)」を形成します。