「元ネタはドラクエ?それとも転スラ?」という疑問に対する明確な結論は、1990年2月11日にエニックス(現スクウェア・エニックス)からファミリーコンピュータ用ソフトとして発売された『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』が揺るぎない初出です。『転生したらスライムだった件』に登場するスライムの主人公リムル=テンペストが口にしたセリフは、先行するドラゴンクエストシリーズに対する敬意を込めたパロディおよびオマージュにほかなりません。
ゲーム史を振り返ると、『ドラゴンクエスト』シリーズにおいてスライムは最初から「プレイヤーに話しかけてくる友好的な存在」だったわけではありません。第1作から第3作までのロト三部作において、スライムはフィールドで最初にエンカウントする典型的な「倒すべき最弱の敵モンスター」に過ぎませんでした。ところが、天空シリーズ第1作となった『ドラクエ4』において、町やダンジョン、隠し部屋などの安全地帯にNPC(ノンプレイヤーキャラクター)として配置されるスライムが登場し、世界観に大きな転換をもたらしたのです。
『ドラクエ4』のゲーム本編でこのセリフが確認できる代表的なポイントは2箇所存在します。1つ目は第4章「モンバーバラの姉妹」におけるコーミズ村の地下室です。静まり返った地下室の隅に佇む緑豊かな世界のスライムに話しかけると、驚いた様子で次のメッセージが表示されます。
「*『いじめないでくれよー。ボクは わるいスライムじゃないよ。』」
もう1つは、第5章「導かれし者たち」で訪れるサントハイム城です。かつてアリーナ姫たちが旅立ったものの、バルザックによって変わり果ててしまった城内の控室裏に隠れているスライムに話しかけると、「*『ボク わるいスライムじゃないよ。ともだちの……』」と語りかけてきます。この2つのシーンこそが、30年以上にわたりゲームファンに語り継がれる伝説のフレーズが産声を上げた決定的瞬間でした。