数々の失敗画像を対岸の火事で終わらせないために、患者側は何を基準に自衛すべきなのでしょうか。日本の歯科医師免許制度では、一般的な虫歯治療を行う一般歯科医であっても、法的には「矯正歯科」を標榜することが可能です。つまり、昨日まで虫歯を削っていた歯科医が、数回の週末セミナーを受けただけで「マウスピース矯正の専門クリニック」を開設することすらできてしまうのです。
だからこそ、日本矯正歯科学会の認定医の選び方が決定的な防波堤となります。学会認定医は、基本研修機関で5年以上の専門的な矯正臨床研修を積み、学術論文の発表や多数の厳格な症例審査をクリアした歯科医師にのみ与えられる資格です。認定医は、歯を単に並べるだけでなく、頭部X線規格写真(セファログラム)を用いて顎の骨と頭蓋骨のバランス、口唇の位置関係をミリ単位・角度単位で分析・予測する訓練を受けています。
セファロ分析を怠り、口腔内スキャナーのデータだけで外部業者任せに作られた治療計画は、まさに羅針盤を持たずに荒海へ漕ぎ出すようなものです。「セファロを撮影して骨格分析を行っているか」「ワイヤー矯正も含めてリカバリーできる技術があるか」の2点は、契約前に必ずクリアすべき絶対条件です。
【プロの結論】矯正に向いている人・絶対に慎重になるべき人の判断基準
自分自身の心身を守るため、以下の判断基準を照らし合わせて治療の是非を冷静に吟味してください。
【治療を進めて良い人の条件】
- 骨格(セファロ分析)と歯肉の健康状態について、リスクを含めた十分な説明を受け、納得できている人
- 「歯並びの美しさ」だけでなく「咀嚼機能の維持・向上」を第一義として捉えられる人
- 違和感や噛み合わせの狂いが生じた際、対等に議論し調整を行ってくれる専任の主治医を確保できている人
【今すぐ治療を思いとどまるべき人の条件】
- 「非抜歯で短期間」「月々数千円」といった安さや手軽さのキャッチコピーだけで医院を選ぼうとしている人
- 大人の矯正に伴う「ほうれい線の変化」や「ブラックトライアングルのリスク」について主治医から一切説明を受けていない人
- アライナーを1日20時間以上装着する自己管理が難しく、少しでも合わないときに自己判断で次のステージに進めてしまう人