出家後、1974年に京都・嵯峨野に開いた寺院が「寂庵(じゃくあん)」です。毎月定期的に開催された法話の会には、全国から悩みを抱える人々が詰めかけ、参拝整理券を求めて長蛇の列ができるほどの人気を集めました。
彼女の法話が多くの人々を惹きつけた最大の理由は、上から目線の説教ではなく、「私もかつて激しい過ちを犯し、人を傷つけた罪深い人間です」と自らの弱さを率直にさらけ出した上で語りかけた点にあります。人間の業や欲望を誰よりも深く知る彼女の言葉は、傷ついた現代人の心に深く染み渡りました。
僧侶としての務めを果たす傍ら、10年以上の歳月をかけて成し遂げた『源氏物語』の現代語訳は空前のベストセラーを記録。晩年には文化勲章を受章するなど、文学と仏道の両面で類まれな足跡を残し、2026年11月に99歳で大往生を遂げました。