宝塚歌劇団の歴史において、入団7年目(研7)でのトップスター就任はまさに前代未聞の事件だった。月組の絶対的エースとして宝塚大劇場の中心に立った天海祐希。彼女の相手役を務めた娘役の麻乃佳世とのコンビネーションは、単なる甘いロマンチシズムを超えた強固な信頼関係で結ばれていた。
代表作となったミュージカル『ミー・アンド・マイガール』で見せた軽妙でユーモアあふれるビル役や、『風と共に去りぬ』のバトラー役。従来の男役に求められた重厚な様式美を突き破り、等身大の人間味と洗練されたモダンな魅力を提示した彼女の演技は、観客の心を瞬時に掴んだ。男役の概念そのものを鮮やかにアップデートしてみせた瞬間だった。