時計の針を1990年代末から2000年代へと巻き戻してみよう。当時のトレンドの発信拠点として君臨していたのが、渋谷の交差点に佇む「渋谷109-2」だった。館内にひしめくショップには、エッジの効いたブランドが並び、週末になれば全国から熱狂的な若者たちが押し寄せた。
そして、その熱気を紙面へと封じ込め、全国の若者に届けるバイブルとなったのが、大洋図書が発行していた伝説的ムック誌『men's egg』である。ストリートファッションのリアルな空気を切り取った読者モデルたちの装いは、単なる服の着こなしを超え、ひとつの生き方として若者たちに伝播していった。
日焼けサロンで焼いた肌、ブリーチされた髪、尖ったつま先のブーツ。洗練されたハイブランドのランウェイとは対極にある、路上の泥臭さとエネルギーがそこには満ちあふれていた。渋谷の路地裏で育まれたこの独自のカルチャーは、当時の日本の若者風俗を象徴する一大現象となったのである。