三軒茶屋といえば、昭和の風情を色濃く残す「三角地帯」が全国的に有名です。小さな酒場や居酒屋がひしめき合う独特のカルチャーは街の魅力である反面、都市防災の観点からは極めて脆弱な「木造密集地域(木密地域)」としての顔を持ち合わせています。
建築基準法制定前の古い木造建築が連なり、幅員2メートルにも満たない細街路が網の目のように走る構造は、ひとたび火災が発生した際に大型消防ポンプ車の直接進入を阻みます。ホースを何本も連結して遠距離から送水せざるを得ず、初期消火に要する負荷は通常の住宅街と比べて跳ね上がります。
さらに心理学的な視点で見落とせないのが、繁華街特有の「正常性バイアス」です。「少し焦げ臭いけれど、近くの焼き鳥屋の煙だろう」「まだ誰も逃げていないから大丈夫だ」という周囲への同調が無意識に働き、初期の避難開始を遅らせてしまうケースが少なくありません。入り組んだ路地で火災に遭遇した際は、煙が見えた時点で迷わず大通り(国道246号や世田谷通り)へ向けて最短ルートで脱出する決断が不可欠です。
【プロの結論】密集商店街で火災に遭遇した際の生死を分ける行動基準
三軒茶屋のような歴史ある路地街を訪れる際、あるいは近隣で暮らすにあたって知っておくべき明確な行動基準があります。
第一に、「煙の進行方向と直角に逃げる」こと。風下へ向かって逃げる行為は、有毒ガスを自ら追いかける結果となります。第二に、「階段や狭い路地の出入口を確保しておく」こと。奥まった2階席や地下の小規模店舗では、火元が唯一の出入口付近だった場合に脱出路が塞がれます。飲食店に入る際は、必ず非常口の有無と開閉状況を一目確認しておく姿勢が身を守ります。