当時の音楽雑誌『MUSICA』等のロングインタビューや関係者の証言を紐解くと、野田洋次郎はこの時期、人間の感情の最も綺麗で純粋な部分と、最もドロドロとして救いようのない暗部の両方を同時に吐き出す制作衝動に駆られていたことが分かります。アルバム『×と○と罪と』へ至る過程において、本作は避けて通れない感情のデトックスでした。
心理学において、愛と憎しみは無関係の対立概念ではなく、同じ強い関心のコインの表と裏(アンビバレンス)とされています。どうでもいい相手に対して、人はこれほどの呪詛を抱くことはできません。「来世も再来世も許さない」と願うほどの執着は、それほどまでに相手を自己の存在の中心に置いていたことの裏返しです。
歌詞の中盤以降に現れる「君が死ぬ瞬間の景色」を巡る独白は、加害の願望というよりも、自分を裏切った相手に対する精神的な復讐劇です。野田洋次郎は自らの表現者としての業を恐れず、誰もが心の中に隠し持っている「他者への黒い感情」を白日の下に晒すことで、表現のタブーを打ち破る挑戦を行っていたといえます。