本作の舞台は、カリフォルニア州の風光明媚な海岸地帯ビッグサー。この息をのむ大自然の景観こそが、物語のもう一つの主役として機能しています。
運命の出会いと揺らぐ信念
画家のローラ・レイノルズ(エリザベス・テイラー)は、未婚の母として一人息子のダニーを女手一つで育てていました。彼女は世俗的な学校教育や宗教的道徳を嫌悪し、自然あふれる海辺の小屋で絵を描きながら、自由奔放かつ誇り高く生きています。しかしある日、ダニーが犯した些細ないたずらをきっかけに裁判所から指導が入り、地元の名門寄宿学校への入学を余儀なくされます。
その学校の校長を務めるのが、聖公会の司祭であり、献身的な妻クレア(エヴァ・マリー・セイント)を持つエドワード・ヒューイット(リチャード・バートン)でした。当初、学校資金集めや名士との社交に追われ、体制の枠組みに安住していたエドワードは、ローラの妥協なき自由な思想に激しい衝撃を受けます。二人は教育方針を巡って対立しながらも、抗いがたい力で惹かれ合っていきます。
キャスト陣が織りなす緊迫のアンサンブル
本作の魅力を語る上で、脇を固めるいそしぎのキャスト陣の重厚な演技は見逃せません。エドワードの良心的な妻クレアを演じたエヴァ・マリー・セイントは、夫の心変わりを察知しながらも知性と気品を崩さない成熟した女性像を好演。また、ローラに惹かれる前衛彫刻家コス・エリクソン役として、ブレイク直前のチャールズ・ブロンソンが出演しており、荒々しく野性的な芸術家気質を鮮烈に体現しています。
切ない結末の真相:別れがもたらした「魂の再生」
物語のクライマックスにおいて、二人の不倫関係はついに白日の下に晒されます。信者たちや後援者への欺瞞に耐えかねたエドワードは、礼拝の壇上で自らの罪と偽善を公に告白。校長の地位と長年築き上げた名声をすべて投げ打ちます。一方の妻クレアは夫の背信を許すことはできず、夫婦関係は決定的な破綻を迎えます。
多くの映画ファンが涙した映画『いそしぎ』の結末は、甘美なハッピーエンドではありません。エドワードは己の内面を見つめ直し、真の神の教えと自己の再生を求めて旅立つことを決断。旅立ちの直前、彼はローラのアトリエを訪れます。二人は互いを深く愛し合いながらも、決して安易な道を選ばず、それぞれの足で立ち上がるために静かな別れを告げます。愛し合った記憶を永遠の光として胸に抱き、エドワードが去っていくラストシーンは、大人の分別と精神的成熟の極みとして語り継がれています。