映画中盤、宗介の血を舐めたことで人間の遺伝子と魔法の力を手に入れたポニョは、父フジモトの制止を振り切って急激な身体変態(メタモルフォーゼ)を起こします。視聴者に強い衝撃を与えたのが、ヒレが裂けて手足が生えてくる「半魚人形態」の描写です。
ネット上で「ポニョの足が生えるシーンがチキンにそっくりで怖い」と頻繁に指摘される理由は、その造形が極めて生物学的なリアリティを持っているためです。手足は人間の丸みを帯びた手足ではなく、肉付きの薄いトカゲや両生類、あるいは毛をむしったばかりの鶏肉(チキン)を想起させる3本指の鋭い鉤爪のような形状をしています。さらに、眼球は瞬きをせず横に開き、口元は裂けたように歪みながら、水の上を猛スピードで四つん這いに疾走します。
心理学において、人間は「人間に似ているが、完全には人間ではない異形」に対して強い恐怖や嫌悪感を抱く「不気味の谷現象」が知られています。進化途中のポニョは、無邪気な幼児の表情と、冷徹な古生物のグロテスクさが奇妙に同居しており、観客の脳に原初的な生理的嫌悪と畏怖を呼び起こす構造になっているのです。