日本の葬儀の約8〜9割は仏式で行われますが、神道やキリスト教の葬儀に参列する機会もあります。宗教ごとの概念の違いを理解していないと、重大なマナー違反につながる恐れがあります。
神道(神葬祭)における「御霊前」の扱い
神道では、人は亡くなると家の守護神(神)になると考えられています。そのため「御神前」や「御玉串料(おたまぐしりょう)」、「御榊料(おさかきりょう)」と書くのが最も確実です。「御霊前」も使用可能とされていますが、仏教の象徴である「蓮の花」が印刷された不祝儀袋は絶対に避けてください。神道に対して仏教専用の絵柄を用いることは大変な無礼にあたります。
キリスト教における使い分け
キリスト教では「死は終わりではなく、神の御許(みもと)へ召される祝福の時」と捉えます。そのため、香典にあたる金品には「お花料(御花料)」と表書きするのがカトリック・プロテスタント共通の万能なマナーです。
なお、カトリックでは故人の霊魂の安息を祈るため「御霊前」を使用できる場合がありますが、プロテスタントでは偶像崇拝を避ける観点から「御霊前」は使えません。宗派が特定できない場合は、迷わず「御花料」を選び、水引のない白封筒か百合の花・十字架が描かれたキリスト教専用袋を用います。
「お布施」と「香典」の決定的な違い
参列者が遺族へ渡すものが「香典」であるのに対し、施主(遺族)が僧侶・寺院へ読経や戒名の謝礼として渡すものが「お布施(御布施)」です。
時折、お布施の封筒に「御霊前」や「御仏前」と書いてしまう方がいますが、これは誤りです。お布施は寺院の本尊へのお供えであり、僧侶への労働対価や故人の供養代金ではないため、表書きにはシンプルに「御布施」または「お布施」と濃墨で記載します。