国内の主要都市において、ホテルの平均客室単価(ADR)は高止まりを続けています。都内のシティホテルでは1泊1室あたり3万円超えが日常化し、外食チェーンやレストランの価格改定も相次ぎました。家族4人で2泊3日の旅行をした場合、宿泊費と飲食費だけで家計を大きく圧迫する構造が定着しています。こうした経済的背景のなかで、宿泊費を抑えつつ居住空間を広く確保できる自炊連泊プランや広めの客室が、合理的な旅行者から熱狂的な支持を集めています。
都内のアパートメントホテル運営企業が2026年1月に公表した利用動態調査によると、国内居住者の宿泊シェアは2026年比で約2.4倍に伸長しました。単なる「宿泊代の節約」にとどまらず、旅先での過ごし方そのものが「観光地を慌ただしく巡る旅」から「暮らすように滞在する旅」へと変化しています。地元のデパ地下や鮮魚店、ローカルスーパーで特産食材を買い込み、部屋でゆっくりと調理して味わう体験そのものが、現代のプレミアムな娯楽として定着したのです。
さらに、社会学的な視点からもこの現象は裏付けられます。パブリックな飲食店では常に他者の視線やマナーへの配慮が求められますが、完全なプライベート空間である客室では、周囲に一切気兼ねすることのない「心理的安全性」が確保されます。これが、小さな子どもを抱える親世代や、周囲の目を気にせず深夜まで語り明かしたい若年層の潜在ニーズと見事に合致しました。