ワールドカップを巡っては、インターネットやSNS上でまことしやかに語られる言説が数多く存在します。その代表例が「優勝候補の前回王者呪い説」と「PK戦は単なる運の勝負」という誤解です。
2002年のフランス、2010年のイタリア、2014年のスペイン、2018年のドイツと、21世紀に入ってから前回王者がグループステージで敗退する現象が相次ぎました。ネット上ではオカルト的なジンクスとして語られがちですが、スポーツ科学やチームビルディングの観点から見れば明確な構造的要因が存在します。頂点を極めた主力選手の高齢化、戦術が完全に世界中から丸裸にされて対策されること、そして予選を勝ち抜く過程で生じる過度な自負(自己効力感の過剰)が、相手国の徹底したカウンター戦術の餌食となるのです。
また、日本代表が苦杯を舐め続けてきたPK戦についても、欧州のスポーツ心理学界では「PK戦は運ではなく科学であり技術である」という見解が定着しています。キッカーの心拍数、助走に入るまでのインターバル(主審の笛からキックまでの秒数)、視線のコントロール、GKの事前スカウティングデータの共有など、すべてが勝率を左右する要素です。イングランド代表がかつて主要大会のPK戦で連敗を重ねていた時期、彼らは心理的アプローチとキックルーティンの見直しを国家プロジェクトとして推進し、2018年大会でジンクスを打破しました。日本代表がベスト16の壁を超えるためにも、こうした極限状態をシミュレートした科学的アプローチの導入が急務となっています。