大河『いだてん』再評価の真相|なぜ今「伝説の傑作」と絶賛されるのか

大河『いだてん』再評価の真相|なぜ今「伝説の傑作」と絶賛されるのか

大河『いだてん』再評価の真相|なぜ今「伝説の傑作」と絶賛されるのかの要点を丁寧に掘り下げてご紹介します。

本作の白眉は、宮藤官九郎が全47話を通じて仕掛けた緻密な構成力と伏線回収です。通常の通史劇とは異なり、落語の大名跡・古今亭志ん生(青年期:森山未來、晩年:ビートたけし)による語りを狂言回しに据え、架空の落語『東京オリムピック噺』を観客に聴かせる体裁をとっています。

登場人物の配置も絶妙を極めました。金栗四三を精神的・物質的に支え続けた妻・スヤ(綾瀬はるか)、日本スポーツ界の礎を築いた嘉納治五郎(役所広司)、田畑政治と激しく対立しながらもオリンピック開催に命を削った政治家・平沢和重(星野源)など、実力派キャストが隙のない布陣を形成しました。特に役所広司が演じた嘉納治五郎が、志半ばで船上で客死する第23回「大地」は、日本の大河ドラマ史に残る悲痛かつ崇高な名シーンとして今なお語り草となっています。

そして最終回に向けた伏線回収の凄まじさは、脚本の教科書と呼べるレベルに達しています。第1回冒頭で描かれた1964年10月10日の開会式の断片、スヤが歌う「自転車節」、ハリマヤ足袋店(ピエール瀧から引き継いだ三宅弘城)の職人魂、そして関東大震災を生き延びた人々の記憶。これら一見無関係に見えたピースが、最終話「時間よ止まれ」に向けて雪崩を打つように1つの絵画として結実します。

単なるスポーツ賛美にとどまらず、1940年の「幻の東京五輪」返上や学徒出陣の悲劇など、国家権力と戦争に翻弄されたアスリートたちの苦悩から目を逸らさなかった点も、本作が批評的に高く評価される理由です。

井上 凛
著者

井上 凛

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。