「あたし ミニスカート はいてるけど まけないわよ!」
タマムシシティのジム(くさタイプ専門のエリカがジムリーダーを務める)などで対峙するミニスカートが発するこの言葉は、初代プレイヤーの記憶に強く刻まれている。しかし、インターネット黎明期から掲示板やSNS上で「初代ポケモンには『あたし まだ はいてないの!』というセリフを言うミニスカートがいる」という都市伝説がまことしやかに囁かれてきた。
関係各所のテキストログおよび実機データを再検証すると、この噂はふたつの異なるテキストが混同されて生まれた誤認であることが判明している。ひとつは、前述したタマムシジムにおける「あたし ミニスカート はいてるけど〜」という純粋な勝気さを示すセリフ。もうひとつは、道路上の草むらに潜むトレーナーが発する「草むらに 入るときは 長ズボンを はきなさいって ママに いわれてるの…… あたし ミニスカート だけど!」という類のアドバイス的文脈だ。これらが「タマムシジムの覗き老人(窓の外から『ここは いいぞ! かわいい 女の子 ばっかり だ!』と叫ぶNPC)」の強烈なキャラクター性と結びつき、「はいてない」というエロティックな都市伝説へと歪曲されて語り継がれたのが真相である。
一方、海外版における規制とローカライズの現場では、極めて厳密なテキスト調整が行われていた。英語版において「ミニスカート」の肩書は衣服そのものを指す単語ではなく、若年女性を意味する古風な語彙「Lass」へと変更されている。これは英語圏において「Miniskirt」を人名肩書として直接冠することが、過度な性的オブジェクト化と受け取られかねないという言語倫理上の判断に基づく。
さらにゲームが2Dから3Dへと完全移行した『ポケモンバトルレボリューション』やニンテンドー3DS以降の本編では、スカート内部の描画に対して厳格な安全策が敷かれた。フリーカメラや戦闘演出でスカートの裾が翻った際、下着が直接視認できる構造は国内外のレーティング機関(日本のCERO、北米のESRB、欧州のPEGI)において、全年齢対象(CERO A)の維持を不可能にする。結果として、内部に黒いスパッツやドロワーズをデフォルトで着用させる仕様、あるいは極端な暗黒空間によるマスキング処理が業界標準となったのである。