猫の肛門腺絞りは必要?床にお尻をこする理由と破裂リスクの真実

猫の肛門腺絞りは必要?床にお尻をこする理由と破裂リスクの真実

猫の肛門腺絞りは必要?床にお尻をこする理由と破裂リスクの真実とは一体何なのか? 主要なファクトを丁寧に紐解いて紹介します。

犬を飼育した経験のある飼い主ほど、「猫も月1回は定期的に肛門腺を絞らなければならない」と思い込みがちですが、獣医臨床における結論は異なります。結論から言えば、すべての健康な猫に対して画一的な肛門腺絞りの必要性があるわけではありません。健康かつ若齢の猫であれば、野生時代からの名残りであるマーキング習性と十分な硬さを持つ便の通過によって、排便時に自然と分泌液が押し流される生理的メカニズムが備わっているためです。

しかし、現代の室内飼育環境下では、自力排出が困難になる個体が確実に存在します。運動不足による腹筋力の低下、去勢・避妊手術後の肥満による肛門周囲脂肪の沈着、ドライフードの摂取バランスによる慢性的軟便や便秘、そして加齢に伴う括約筋の衰えです。自力排出が滞った状態を放置すると、嚢内で細菌が異常繁殖して猫の肛門嚢炎を発症します。初期症状としては肛門周囲の赤みや腫れ、排便時に痛がって鳴く、尻尾の付け根を過剰にグルーミングして脱毛させるといった行動が現れます。

さらに炎症が進行すると嚢内の内圧が限界を突破し、組織が自壊して皮膚を突き破る猫の肛門腺破裂の症状へと発展します。破裂が起きると、肛門の横に痛々しい穴が開き、ドロッとした赤褐色の膿や壊死組織が大量に噴出します。強い激痛から猫はパニック状態に陥り、触れられることを激しく拒絶し、食欲不振や発熱を伴う全身性の衰弱に至るケースも珍しくありません。自力排出ができるか否かの見極めを怠り、「猫だから絞らなくて良い」と放置することは、重大な医療事故を招く引き金となります。

小林 直樹
著者

小林 直樹

シンプルで洗練された住まいづくりとインテリアコーディネートのアイデアを提案しています。