映画界においても、彼は最後まで強烈なインスピレーションを与え続けた。宮崎駿監督のアニメーション映画『君たちはどう生きるか』において、世界の均衡を保つキーパーソンである「大叔父」の声演を務めたことは記憶に新しい。
静けさの中に威厳と哀愁を漂わせるその声の演技は、まさに火野正平にしか出せない存在感であった。長年培われた人生の深みと、年齢を重ねても失われない色気が声に乗ることで、作品全体に底知れぬ奥行きを与えた。スクリーン越しにも伝わるその表現力は、彼が生涯現役のトップ表現者であったことを雄弁に物語っている。