日本の映像史において、視覚的迷路をストーリーテリングの核として取り入れたもう一つの原点が『サイボーグ009』をはじめとする往年のSFアニメ群だ。人間性を奪われたサイボーグたちが葛藤する内面世界や、巨大な敵組織の要塞を描く際、制作者たちはしばしば不条理な幾何学建築を画面上に構成した。
出口のない回廊や、上下左右の感覚を失わせる階段構造は、主人公たちが抱く精神的な孤独や出口のない運命を表現するための極めて効果的なツールであった。感情を揺さぶる叙情的なドラマと、冷徹な幾何学デザインの対比。この演出手法は、その後の日本のアニメーション産業全体へと受け継がれ、視覚演出のスタンダードとして深く根を張ることになる。