民俗学の開拓者である柳田國男は、日本各地に点在する「瘤取り爺」の変異形を克明に記録した。東北から九州に至るまで、ある地域では鬼ではなく天狗や狐が登場し、取られる対象もコブではなく顔のパーツであったりする。地域ごとに細部が異なるのは、口承文学がその土地の風土や信仰と結びついていた証拠だ。
戦後、歴史研究者や民俗学者らが立ち上げた日本民話の会などの研究団体は、これら地域限定の伝承を体系化し、商業化された物語の裏に眠る日本民話本来の猛毒とエネルギーを救い出した。庶民が夜夜な囲炉裏端で語り継いだ原形には、自然への畏怖、異界への恐怖、そして容赦のないコミュニティの掟が色濃く残されている。