多くの人が見落としているのが、公用文・用字用語の手引きや大手新聞社が定める記者ハンドブックにおける厳格な統一ルールです。
一般のネット記事では「どちらを使っても間違いではない」と曖昧に結論づけられるケースが見受けられますが、自治体の公文書や報道機関の基準は極めてシビアです。文化庁の通知や各省庁の文書作成要領では、意味の重複や混乱を防ぐため、基準が明確に細分化されています。例えば、自治体が住民に対して健康診断の受診を呼びかける文書では、例外なく「受診勧奨」「受診を勧める」という用字が採用されます。これは個人の意思決定に対して行政が積極的な行動を促す行為だからです。
さらに見逃せない誤解が、「おすすめ」という名詞形における漢字の混同です。飲食店のメニュー表などで「本日のお薦め料理」「店主のお勧め」と混在している場面をよく見かけます。料理という「品物」を推しているため、文字本来の意味から言えば「お薦め」が正確です。しかし、ワープロソフトやスマートフォンで「おすすめ」と入力して最初に表示される変換候補の多くが「お勧め」であるため、無意識のまま「お勧め料理」と表記してしまう事例が後を絶ちません。