多くの人が抱く「なぜ速度を上げたり重力を受けたりするだけで、時計の針の進み方が変わるのか」という疑問。この謎を解く鍵は、アインシュタインが理論の前提に据えた「光速度不変の原理」にあります。
宇宙において、真空中を進む光の速度(秒速約30万キロメートル)は、光源がどれほど高速で動いていようと、観測者がどれほどの猛スピードで移動していようと、常に一定の数値を保ちます。日常的な感覚であれば、時速100キロで走る電車から前方に時速10キロでボールを投げれば、地面にいる人からは時速110キロに見えるはずです。しかし、光だけはこの単純な足し算が成り立ちません。
光速と時間の関係において、速度(距離÷時間)の計算結果である光速が常に一定であるならば、観測者が超高速で移動した際に辻褄を合わせるため、動いている側の「時間の進み方そのもの」が遅く引き延ばされる必要があります。これが特殊相対性理論が示す時間の遅れが生じる理由です。
一方、1915年に発表された一般相対性理論は、空間と時間(時空)が質量によって歪むメカニズムを明らかにしました。質量を持つ天体は周囲の時空を窪ませます。重力とは、この歪んだ時空に沿って物体が引き寄せられる現象にほかなりません。重力と時間の進み方には深い相関があり、重力が強い場所(時空の窪みが深い場所)ほど時間の流れが遅くなり、重力が弱い高所ほど時間の進みは速くなります。
地表から高度約2万キロメートルを飛行するGPS衛星の内部では、常にこの「速度」と「重力」による綱引きがミリ秒単位で繰り広げられています。