結論から申し上げますと、室内に現れたゴキブリを見失ったまま何の対策も講じずに就寝するのは、決して推奨できません。その最大の理由は、単なる不快感にとどまらず、人体への直接的な接触事故や病原菌の媒介リスクが実在するためです。公益社団法人日本ペストコントロール協会などの資料でも指摘されているように、チャバネゴキブリやクロゴキブリの体表・排泄物には、サルモネラ菌や黄色ブドウ球菌といった多数の病原微生物が付着しています。
「暗くして寝ていれば、向こうも人間を恐れて近寄らないだろう」と考えるのは危険な油断です。実は、ゴキブリが寝てる間に寄ってくる理由には明確な生物学的誘引が存在します。ゴキブリは嗅覚器である触角を駆使して空気の流れや化学物質を鋭敏に察知しますが、就寝中の人間が発する「二酸化炭素を多く含む温かい呼気」、頭皮や顔面から分泌される「皮脂成分」、そして寝汗による「水分」は、彼らにとって強力な誘引シグナルとなります。特に乾燥に弱いクロゴキブリにとって、人間の口腔周辺から漏れ出る湿気は格好のターゲットになり得るのです。
実際に国内の医療機関や耳鼻咽喉科の臨床報告では、就寝中に外耳道(耳の穴)へゴキブリが侵入して摘出処置に至る症例が毎年一定数報告されています。狭く暖かい隙間を好む「走触性」を持つ小型個体や幼虫にとって、人間の耳腔や髪の毛の隙間は格好の潜り込み先となってしまいます。恐怖で一睡もできない精神的ストレスも含め、そのまま眠ることは避け、最低限の防護策を講じる必要があります。