『ファインディング・ニモ』の魅力は、主人公を取り巻く脇役たちの強烈なキャラクター造形にあります。シドニーの歯科医院の水槽に閉じ込められた「タンク・ギャング」の面々や、過酷な旅の途中で出会う海の住人たちは、それぞれが独自の哲学とドラマを背負っています。
水槽のリーダーであるギル(ツノダシ)は、かつて海で暮らしていた経験を持ち、幾度もの脱出失敗による傷跡を体に刻んでいます。閉鎖空間に甘んじることなく自由への執念を燃やす彼の姿は、右側のヒレが小さく自信を喪失していたニモに対し、「自分でやってみるんだ」と自立を促すメンターとして機能します。
一方、外洋の東オーストラリア海流で出会うアオウミガメのクラッシュは、父マーリンに対して子育ての本質を提示する重要な役割を担います。息子のスクワートが波に揉まれても慌てず見守り、「自分で這い上がってくるさ」と笑うクラッシュの姿勢は、過保護に縛られていたマーリンの価値観を根本から揺さぶります。東京ディズニーシーのアトラクション「タートル・トーク」でも親しまれる彼の軽妙な語り口と深遠な名言は、大人の鑑賞者にも強い響きを残します。
さらに、海洋学校の担任であるエイ先生(マダラトビエイ)が歌う軽快な教育ソング(「科学の歌」)や、自己改善のために「魚は友達、餌じゃない」という誓いを立てたホホジロザメのブルース、ヒラシュモクザメのアンカー、アオザメのチャムによるサポートグループなど、ユーモアと海洋知識が巧みに融合された演出が随所に散りばめられています。