黒板五郎という人物は、決して完璧な父親ではなかった。不器用で、感情をうまく表現できず、時に酒に逃げ、失敗を繰り返す。だが、その背中には嘘がない。田中邦衛が演じた五郎の佇まいは、高度経済成長に沸く日本への痛烈なアンチテーゼでもあった。「金がなくても知恵を出せ」「自然から学べ」という無言の教え。名優・田中邦衛が吐露する言葉にならない呻きや照れ笑いは、フィクションを超えた圧倒的な現実味を帯びて視聴者の心に突き刺さる。
五郎が子どもたちに注いだ無条件の愛。それは甘やかしではなく、厳しさと情けなさをすべて曝け出す生き様そのものだった。彼が劇中で見せた数々の涙は、時代の波に呑まれそうになりながらも必死に生きた昭和・平成の父親たちの自画像でもあった。