ネット検索で頻繁に目にする「チワワのブルータンは短命」という説ですが、遺伝子そのものが直接的に内臓疾患を引き起こして寿命を縮めるという明確な獣医学的根拠はありません。一般的なチワワの平均寿命である12〜15年と同等に天寿を全うする個体も数多く存在します。それにもかかわらず短命説が定着した背景には、特有の皮膚疾患と無理な交配環境という2つの要因が絡んでいます。
ブルータンという毛色は、本来のブラック&タンの色素を薄める劣性のダイリューション遺伝子(d遺伝子)を両親から受け継ぐことで発現します。この遺伝的変異に伴い、メラニン色素が毛幹内部で不均一に凝集し、毛根が物理的に脆弱化する現象が発生します。これによって引き起こされるのが、いわゆるカラーダイリューションアロペシア(CDA:淡色被毛脱毛症)です。
CDA自体は致死性の疾患ではありません。しかし、被毛の脱落によりバリア機能を失った皮膚が重度の細菌感染や膿皮症を慢性的に繰り返したり、免疫力の低下を招いたりすることで、全身状態が悪化するケースがあります。さらに、過去に一部の営利目的ブリーダーが希少価値を高めるために近親交配を繰り返した結果、先天的に脆弱な個体が出回った歴史が「ブルータン=短命」というイメージを強固にしました。