山本学という俳優を語る上で欠かせないのが、1978年の田宮二郎主演版『白い巨塔』(フジテレビ系)における里見脩二役です。医学界の権力闘争に野心を燃やす財前五郎に対し、患者の命と医療の倫理に愚直なまでに寄り添う内科医・里見を演じきった姿は、今なお「里見役の決定版」としてドラマ史に金字塔を打ち立てています。
劇団俳優座養成所の第7期生として演技の基礎を叩き込まれた山本学は、同期の田中邦衛さんや井川比佐志さんらとともに、徹底したリアリズム演技を追求しました。派手なオーバーアクションに頼らず、わずかな視線の揺らぎや声の抑揚で人間の苦悩を表現する技術は、この時期に培われたものです。
当時のインタビュー記録において、山本は里見役について「観客に善人として押し付けるのではなく、弱さや迷いを抱えた生身の人間として演じることの難しさ」を吐露していました。その誠実な人物描写が作品に圧倒的なリアリティと緊張感を与え、昭和のテレビドラマ全盛期を牽引する原動力となったのです。