渋谷の電力館の盛衰は、単なる一企業のショールームの閉鎖にとどまらず、日本社会における「企業メセナ(文化支援・社会貢献)と広報戦略の歴史的パラダイムシフト」を象徴しています。
昭和後期から平成初期にかけて、電力会社や通信キャリアをはじめとする巨大インフラ企業は、巨額の予算を投じて都市の一等地に体験型パビリオンを構えることがステータスであり、社会的責任の一環と見なされていました。しかし、2010年代以降のエネルギー自由化、ソーシャルメディアの普及、そして未曾有の震災リスクへの直面により、企業広報は「物理的なハコモノでの一方的な啓発」から「透明性の高い事業説明とデジタルコミュニケーション」へと根本的に移行しました。
電力館が提供した「都市の中で誰もが無料で先端科学に触れられる場」という価値は極めて高いものでしたが、現代の都市開発や企業経営の観点からは、公的インフラ企業が都心一等地に巨大な無料娯楽施設を恒常維持する時代は完全に過去のものとなったと言えます。