鬼舞辻無惨が十二鬼月を組織した目的は、極めて打算的かつ自己中心的な理由に基づいています。千年以上にわたる無惨の悲願はふたつしかありません。ひとつは「太陽を克服すること」、もうひとつはその鍵を握る「青い彼岸花を見つけ出すこと」です。しかし、日本全国をひとりで捜索するには限界があり、日光に怯えながら夜間のみ行動する無惨にとって、自らの手足となって探索を行い、同時に邪魔立てする鬼殺隊を根絶やしにする尖兵が必要でした。
しかし、そこで露わになったのが上弦と下弦の圧倒的な能力差です。無惨自身が「上弦は100年以上顔ぶれが変わっていない」と語った通り、上弦の鬼たちは歴代の柱たちを何十人も葬り去り、事実上の無敵を誇っていました。一方で下弦の鬼たちは、数十年単位で柱に遭遇するたびに討伐され、常にメンバーが入れ替わる消耗品に過ぎませんでした。
この差を生んだ最大の要因は、「人間としての精神的執着の強度」と「受け入れられる無惨の血の許容量」にあります。上弦の鬼たちは、黒死牟の嫉妬、猗窩座の強さへの飢え、妓夫太郎の怨嗟のように、人間時代に味わった絶望が強烈な執念へと転化していました。その執念の器が無惨の強力な血の猛毒に耐えうる土台となり、100年以上の修練と捕食を経て、柱の複数同時攻撃でしか撃破できない化け物へと昇華したのです。