二階堂のCMを目にしたとき、訪れたことのない場所であるにもかかわらず、なぜ私たちは強烈な「懐かしさ」や「胸の締め付けられるような切なさ」を覚えるのでしょうか。その最大の理由は、映像の主役に選ばれている被写体の性質にあります。
画面に登場するのは、きらびやかな観光名所ではありません。役目を終えた鉄道の廃線跡や人影のない駅舎、旧鉱山の巨大な竪坑櫓、木造校舎の教室など、「かつて確かに人の賑わいがあり、今は静寂に包まれている空間」ばかりです。繁栄の残り香と静寂の対比が、見る人の無意識下にある幼少期の記憶や、二度と戻らない過去の時間を呼び覚まします。
さらに、映像のトーンを決定づけているのが、早朝や黄昏時の斜陽(マジックアワー)を多用したライティングです。順光の鮮やかな青空ではなく、逆光や陰影を活かしたローキーな映像設計が、空間に重厚な陰影と叙情性を与えています。