「DTMをなめるな」という警告がより切実さを増すのは、近年過熱した「音楽で副業」「スキル販売で月数万円」というネットビジネス的な言説との衝突です。クラウドソーシングサービスやスキルシェアプラットフォームを覗くと、DTMを取り巻く収益環境の過酷な現実が浮き彫りになります。
現在、大手スキルマーケットで発注されている個人向け楽曲制作案件の価格帯を調査すると、1曲あたり3,000円〜5,000円という極端な低価格提示が散見されます。数分のフルコーラス楽曲を完成させるには、どんなに手慣れた作家でも構想からミックス、マスタリング、修正対応まで含めて15〜30時間の作業を要します。これを時給換算すると数百円以下に落ち込み、最低賃金を大幅に下回る買い叩きが日常化しているのが実情です。
関係各所への取材でも、現役のフリーランスDTMクリエイターたちからは悲痛な本音が漏れ聞こえます。
「クライアントから『YouTube動画のBGMなので、サクッと1時間くらいで作ってください』と2,000円で発注が来る。サクッと作れるようになるまでに、どれだけの機材投資と年単位の勉強が必要だったのかが全く理解されていない」
「『修正は無制限でお願いします』と後出しで言われ、リテイクを5回繰り返して手取りが3,000円。電気代とプラグインのサブスクリプション代すらペイできない」
こうした買い叩きが横行する背景には、安易に「DTMは簡単に稼げる」と煽る副業情報商材の影響で、技術が未熟なまま安値で案件を乱獲する初心者が後を絶たない構造があります。この悪循環が相場全体を下落させ、既存のクリエイターが「安易な気持ちで市場を荒らすな=DTMをなめるな」と強い反発を抱く火種となっているのです。