甲虫の飼育といえば、朽木を発酵させたフレーク状のマットを敷き詰め、定期的に交換しながら育てるのが一般的な常識です。ところが、ゴライアスオオツノハナムグリの幼虫飼育では、この常識がまったく通用しません。これがまさに、初心者が「ゴライアスオオツノハナムグリ飼育が難しい理由」の筆頭に挙げられる根本的な要因です。
巷で囁かれる「幼虫にドッグフードを与える」という奇抜な噂について、専門ショップ店主や熟練ブリーダーへのヒアリング調査を行ったところ、これは都市伝説どころか現場における必須の飼育技術であることが裏付けられました。アフリカの原生林において、彼らの幼虫は倒木内の有機物だけでなく、鳥類の糞や動物の死骸、さらには他の昆虫などを捕食して育つ雑食・肉食傾向を強く持っています。そのため、植物性のセルロースを主成分とする発酵マットだけを与え続けても、深刻な栄養失調に陥って縮み、最終的には衰弱死してしまいます。
実際の現場では、無添加・グレインフリーの高タンパク粒状ドッグフードやキャットフード、あるいは錦鯉用の高浮上性飼料、乾燥ミルワームなどをマットの表面や窪みに配置して直接捕食させます。幼虫は驚くべき嗅覚と反応速度でこれらに食らいつき、貪り食う様子が観察されます。ただし、動物性タンパク質は高温多湿な飼育ケース内で急速に腐敗しやすく、強烈な異臭、アオカビの爆発的繁殖、コバエやコナダニ、線虫の大量発生を引き起こす諸刃の剣です。エサの残骸を取り除く徹底した衛生管理と、激しい共食いを防ぐための単独個別飼育が絶対条件となります。