「会心の一撃」を日本全国津々浦々にまで浸透させた立役者は、1986年に第1作が発売されたエニックス(現スクウェア・エニックス)の『ドラゴンクエスト』です。開発者の堀井雄二氏が、限られたファミコンのメモリ容量の中で「プレイヤーに最高の手応えとカタルシスを感じさせたい」という想いから採用したシステムでした。
ここで重要なのが、プレイヤー側の繰り出す「会心の一撃」と、敵モンスター側が繰り出す「痛恨の一撃」の決定的な違いです。ゲームデザインの観点から両者の立ち位置を整理すると、以下の明確な非対称性が浮かび上がります。
堀井雄二氏のテキストセンスの真骨頂は、「クリティカルヒット」という無機質なカタカナ語を避け、能動的な喜びを表す「会心」、受動的な悔恨を表す「痛恨」という情緒豊かな漢語を対比させた点にありました。耳に残る独特の効果音(甲高いピロリロリロという炸裂音)と相まって、プレイヤーの脳内に強烈なドーパミンを放出させる仕掛けが見事に完成したのです。