ここで、インターネット上で拡散されがちな「ジブリの横顔に関する俗説」の誤解を解いておく必要があります。ネット上では時折、「ジブリの横顔が独特なのは、アニメーターのデッサン力が不足しているからではないか」「昔のセル画時代の手抜き手法がそのまま残っているだけだ」といった極端な意見が見受けられます。
しかし、これはアニメーションにおける「動的補正(ダイナミック・コンペンセーション)」の概念を無視した短絡的な見方に過ぎません。アニメーションは毎秒24コマの世界であり、観客の脳内では前後のフレームが網膜残像によってブレンドされます。仮に真横を向いた瞬間だけ美術書通りのフラットな横顔を配置すると、斜め前から真横、そして斜め後ろへと首を回す一連のシークエンスにおいて、急激に「顔の幅がペラペラに薄くなった」かのような錯覚(いわゆるペラペラ現象)が起きてしまいます。
ジブリのアニメーターたちは、カメラがキャラクターの周囲を回り込むような複雑なレイアウトにおいて、顔の立体感を維持するために、あえて真横のコマで奥側のパーツをわずかに残したり、鼻梁の傾斜を誇張したりする補正を加えています。静止画の1枚だけを取り出して「狂っている」と断じるのは、彫刻作品を顕微鏡で覗いて「表面が平坦ではない」と批判するようなものであり、動態表現の本質を見誤っていると言わざるを得ません。