琴勝峰のキャリアを語る上で避けて通れないのが、順風満帆に見えた出世街道に突如立ちはだかった怪我との闘いです。幕内定着を果たした直後、右足首の重篤な靭帯損傷や膝の負傷に見舞われ、本来の土俵際での粘りや鋭い踏み込みが影を潜めました。相撲協会の公式取組記録からも、痛みに耐えかねて腰高になり、簡単に土俵を割ってしまう場面が散見された時期がありました。
度重なる休場を余儀なくされ、一時は十両下位まで番付を落とす苦杯を舐めました。当時の様子について部屋関係者は「本人は口に出さずとも相当な悔しさを抱えていた。だが腐ることなく、一日数十番の申し合い稽古と並行して、徹底的な基礎トレーニングに明け暮れていた」と証言しています。
この挫折期間こそが、現在の琴勝峰を形成する最大の転換点となりました。怪我の再発を防ぐため、股関節の柔軟性向上と下半身の筋力強化に特化したトレーニングを導入。重心を低く保ち、相手の突き押しに対してもブレない強固な土台を作り上げたことで、十両からの再入幕、そして2023年初場所における幕尻近くからの劇的な優勝争い(11勝4敗で優勝決定戦に進出、敢闘賞受賞)という劇的な復活劇へと結実しました。