ヒッピーが掲げたスローガン「ラブ&ピース(Love & Peace)」は、単なる耳当たりの良い標語ではありません。その根底には、資本主義が推し進める激しい競争社会、軍産複合体による暴力、そして人間性を抑圧する制度的道徳に対する、全身全霊の拒絶が込められていました。
彼らが重んじた思想的コアは、主に以下の3点に集約されます。
第一に「精神の拡張とサイケデリック・カルチャー」です。既存の常識という枠組みを破壊し、自己の内面を極限まで開放する手段として、LSDなどの幻覚剤を用いたトリップ体験や、歪んだギターサウンドを特徴とするサイケデリック・ロック、極彩色のポスターアートが発展しました。ティモシー・リアリー博士が提唱した「Turn on, tune in, drop out(意識を点火し、波長を合わせ、体制からドロップアウトせよ)」という言葉は、彼らの教義そのものとなりました。
第二に「東洋思想・神秘主義への傾倒」です。西洋的な二元論や合理主義の行き詰まりを感じた彼らは、インド哲学、ヒンドゥー教、そして日本の「禅(Zen)」に救いを求めました。瞑想やヨガを取り入れ、個と宇宙の合一を目指すアプローチは、後に世界的な広がりを見せるニューエイジ思想の母体となります。
第三に「自然回帰とエコロジー」です。大量生産・大量消費のサイクルから脱却し、母なる地球と調和した暮らしを取り戻すこと。都市を離れ、農村部で自給自足のコミューン生活を営む実験が全米各地で試みられました。