中医学とは、中国で数千年にわたって積み重ねられてきた臨床経験と哲学思想が統合され、体系化された伝統中国医学(Traditional Chinese Medicine: TCM)を指します。人間を自然界の一部と捉え、心身全体のバランスを整えることで人間本来の治癒力を引き出す点に最大の特徴があります。
混同されやすい概念として「東洋医学」と「漢方」が挙げられますが、これらは明確に区別されます。
- 東洋医学:アジア地域で発展した伝統医学全般を指す総称。中医学をはじめ、日本の漢方、韓国の韓医学、インドのアーユルヴェーダなどがすべて含まれます。
- 漢方(日本漢方):古代中国から日本へ伝わった医学が、室町時代から江戸時代にかけて日本の気候風土や日本人の体質に合わせて独自の進化を遂げた伝統医学です。
- 中医学:中国において古代の原典(『黄帝内経』や『傷寒論』など)をベースに、清代以降や近代国家プロジェクトとして理論的・学問的に高度な体系化が進められた医学です。
日本の漢方が「特定の症状パターンに対してどの処方を当てるか」という実用的な方証相対(ほうしょうそうたい)を重視する傾向があるのに対し、中医学は「なぜその症状が起きているのか」という病因・病理・体質を理論的に徹底分析する弁証論治(べんしょうろんち)を治療の絶対的な軸としています。
なお、中国において中医学を担う「中医師」は、西洋医学の医師と同等の5年制または8年制の医学大学を経て国家試験に合格した国家資格の医療専門職です。日本国内には中医師免許の公的制度はありませんが、世界中医薬学会連合会などが認定する「国際中医師」などの民間資格を持つ専門家が、漢方薬局や鍼灸院で高度な相談業務に携わっています。