「首をひねる」という慣用句は、辞書的な定義において「疑問や不審に思うこと、あるいは納得がいかず不賛成の気持ちで深く考え込むこと」を指します。首を物理的に左右にねじるような動作そのものから派生し、人間の内面で起きている認知的葛藤を外的に示す身体表現として定着しました。
この表現の歴史は極めて古く、鎌倉時代初期に編纂された説話集『宇治拾遺物語』(1221年頃)の一節にすでにその原型が確認されています。作中には「かはつるみは、いくつばかりにてさぶらひしぞと問ひたるに、この僧、くびをひねりて」と記されており、問われた事柄に対して僧侶が記憶を辿り、思案に暮れる様子が生々しく描かれています。
興味深いことに、日本語の歴史的変遷を辿ると、かつては「深く感動し、その余韻を確かめるように味わう仕草」としても「首をひねる」が用いられていた時代がありました。しかし時代の推移とともに肯定的な感嘆の意味合いは薄れ、現代においてはもっぱら「疑問を抱く慣用句」や「納得がいかない心理」を象徴するネガティブ〜思索的なニュアンスへと純化していった経緯があります。