中袋を収めた後、外側の「上包み(うわづつみ)」を折る工程にも、決して取り違えてはならない決定的な分かれ道があります。裏側の折り返しにおいて、「下のヒダを上のヒダに重ねる(下側が一番手前に来るようにして上を向かせる)」のが慶事の鉄則です。
民俗学や有職故実(伝統的礼法)の観点から見ると、この折り方には深い象徴性が宿っています。
- 慶事(祝儀):「下側を上に被せる」ことで、上部に向かってポケットのような受け皿が形成されます。これは「天から降り注ぐ幸福や富をこぼさず受け止める」「運気が右肩上がりに上昇する」という祈祷的な意味を持っています。
- 弔事(不祝儀):「上側を下に被せる」ことで、下に向かって開いた形状になります。これは「悲しみの涙を溜め込まず、下へ流し去る」「不運がこれ以上留まらないようにする」という哀悼の儀礼言語です。
市販の祝儀袋にはあらかじめ折り目がついていますが、中袋の厚みによって折り直す際、誤って上側を下に重ねてしまうミスが多発しています。水引を結ぶ、あるいは水引のスリーブを戻す前に、裏側の重なりが「下から上へ被さっているか」を必ず指差し確認してください。
水引の種類と選び方の基準
袋の装飾である「水引(みずひき)」の選択も極めて重要です。用途に応じた明確な使い分けが存在します。
- 結び切り(鮑結び・あわじ結び):端を引っ張ってもほどけない形状から、「一生に一度きりであってほしい祝い事」に用います。婚礼、快気祝い、傷病見舞いなどがこれに該当します。
- 蝶結び(花結び):何度でも結び直せる形状であるため、「何度繰り返しても喜ばしい祝い事」に限定されます。出産祝い、入学・卒業祝い、新築祝い、長寿祝いが対象です。
結婚祝いに蝶結びの水引を使用することは「再婚を連想させる」ため、最大のタブーとされています。水引の色は紅白、金銀、赤金などが慶事用となり、本数は奇数(婚礼では5本を2束合わせた「10本」が伝統的)を選びます。