リフトを降りて山頂駅を抜けると、巨大なすり鉢状の火口が目前に開けます。この火口縁に沿ってぐるりと1周する遊歩道が、名物のアクティビティである「お鉢巡り」です。
火口の周囲は全長約1,000メートル。舗装された遊歩道が整備されており、一般的な大室山お鉢巡りの所要時間は約20〜30分です。歩行距離自体は手頃ですが、海側と山側で約30メートルの高低差があり、ところどころに程よい傾斜のスロープと階段が設置されています。足元を安定させるため、スニーカーなどの歩きやすい靴での散策が不可欠です。
お鉢巡りの最大の醍醐味は、歩を進めるごとにドラマチックに変化する大室山山頂からの富士山絶景と海洋パノラマのコントラストにあります。西側から北側を臨むルートでは、裾野を広げた端正な富士山と天城連山が視界を埋め尽くし、南東側へ視線を転じれば、相模湾のエメラルドブルーの中に伊豆大島、利島、新島、式根島、神津島といった伊豆諸島がくっきりと浮かび上がります。
また、火口の南側斜面には歴史ある「大室山浅間神社」が静かに鎮座しています。ここには磐長姫命(イワナガヒメノミコト)が祀られており、古くから安産や長寿の神として信仰を集めてきました。神話において磐長姫命は、富士山の祭神である木花開耶姫(コノハナサクヤヒメ)の姉にあたります。地元では古くから「大室山の山頂で富士山を声高に褒め称えると、姉神の磐長姫命が嫉妬して天候が荒れる、あるいは災いが起きる」という言い伝えが残されており、このユニークな伝承も大室山山頂浅間神社の見どころのひとつとして知られています。