多くの参拝者がまず抱く疑問が、坐摩神社 読み方における「いかすり」と「ざま」の違いです。公式な社号は「いかすりじんじゃ」と読みます。式内社(大社)に列し、旧社格は官幣中社、現在は神社本庁の別表神社に指定されている由緒正しき古社です。
「いかすり」という語源は、古語の「居所知(いかしり)」や「生かす・擦る(土地を清め平らかにする)」に由来すると伝えられています。土地や居住空間を神聖に保ち、生命力を蘇らせるという意味が込められており、祀られている五柱の神々は総称して「坐摩大神(いかすりのおおかみ)」と呼ばれます。
一方で、地元大阪の人々が親しみを込めて呼ぶ「ざまじんじゃ」「ざまさん」という通称は、漢字の音読み「ざま」が商都・大阪の町衆の間で定着した結果です。公式発表資料や神職の解説によれば、正式な祭祀では「いかすり」と奏上されるものの、町衆が「ざまさん」と呼んで親しむことも長い歴史の中で自然に受け入れられてきました。
祀られている五柱の神々は以下の通りです:
- 生井神(いくいのかみ):生命力に満ちた井戸水の神
- 福井神(さくいのかみ):繁栄と幸福をもたらす井戸水の神
- 綱長井神(つながいのかみ):深く清らかな水を汲み出す神
- 波比岐神(はひきのかみ):屋敷の庭・境界を守護する神
- 阿須波神(あすはのかみ):足場を固め、旅立ちを守る旅行安全の神
坐摩大神は生活の基盤である敷地や家屋を守護する住居守護の神として絶大な信仰を集めています。特に阿須波神については、『万葉集』巻20に防人(さきもり)が無事な帰還を祈った歌として次の名詠が残されています。
「にはなかの 阿須波のかみに こしばさし あれはいははむ かへりくまでに」(万葉集 4350)
旅立ちの安全を祈願する防人の切実な思いが詠み込まれており、平安時代以前から国家・民衆双方から崇敬されていた動かぬ証拠といえます。