ネット上の誹謗中傷や個人情報の晒しあげは、かつて一部のマニアックな掲示板に限られた問題だった。しかし現在、その主戦場は日常的に使われるSNSへと完全にシフトしている。特に情報伝播の速度が極めて早いX(旧Twitter)では、文脈を切り取られた動画や個人を特定する画像が一夜にして数百万回表示され、まとめサイトへ瞬時に転載される構造が定着してしまった。
卑劣な悪戯や私的制裁の過熱化に対し、警察組織も対策を強めている。警視庁サイバー犯罪対策課を筆頭に、悪質な権利侵害や名誉毀損に対する摘発件数は年々増加傾向にある。だが、法的な捜査や犯人特定が進んだところで、一度世界中に撒き散らされたデジタルデータを完全に回収することは極めて困難だ。サイバー犯罪としての立件と、被害者のデジタル上の平穏を取り戻すこととの間には、依然として巨大な壁が立ちはだかっている。