インターネット上の言説では、ノンセクシャルに関して誤った言説や無神経な言説が頻繁に散見されます。最も悪質な偏見が、「異性から過去に傷つけられたトラウマの産物である」「ホルモンバランスの乱れや鬱病による性欲減退障害(HSDD)である」という病理化の言説です。
精神医学的な診断基準(DSM-5など)において、HSDD(性的関心・興奮障害)と診断される要件には「本人自身が性的欲求の低下に対して著しい苦痛・苦悩を感じていること」が含まれます。しかし、ノンセクシャルの多くは「性欲を抱かない自分自身」に苦しんでいるのではなく、「性欲を持たないことを異常視し、性行為を強制してくる外部の社会構造」に苦しんでいます。過去にいかなる虐待や性暴力の被害歴がなくても、生まれつき他者に性欲を抱かない当事者は無数に存在します。
また、もうひとつの重大な盲点は、スキンシップの許容度におけるグラデーションです。ノンセクシャルを一括りに「他人に触られることすら嫌悪する潔癖症」と決めつけるのは決定的な過ちです。
🔍 スキンシップに対する主な3つの類型
① スキンシップ愛好型:手を繋ぐ、抱き合う、添い寝するなどの肌の触れ合いを好むが、挿入や愛撫などの性行為には明確に拒絶を示す。
② 接触回避型(タッチアバージョン):肉体的な接触全般に心理的抵抗があり、パーソナルスペースを厳格に維持することを望む。
③ 妥協的受容型:自分からしたいとは思わないが、相手への奉仕や関係維持の手段として、一定の枠組み内で性行為を許容・割り切る。
このように、「何が心地よくて何が苦痛なのか」の境界線は一人ひとり異なっており、紋切り型のレッテルで判断することは極めて危険です。