ネット上の筋トレ情報で広く蔓延しているのが、「高重量を持てば持つほど腕は太くなる」という重さ至上主義の盲信だ。しかし、上腕三頭筋のような紡錘状筋・羽状筋の混在組織において、フォームを崩した無理な高重量トレーニングは百害あって一利なしである。
生体力学的な見地から解説すると、重すぎるダンベルをコントロールしようとする際、脳は無意識に関節を守るため、大胸筋や広背筋、三角筋前部といったより体積の大きな筋群へ負荷を代償させる神経回路を働かせる。結果、三頭筋にかかる実効張力(テンション)は劇的に低下する。ライイングトライセプスエクステンションにおいて、額ではなく胸の上へ落とすような崩れたフォームになる現象はその典型例だ。
筋肥大を促すシグナルは「絶対的な重量」そのものではなく、「筋肉が限界近くまで引き伸ばされ、かつ収縮する過程で受ける力学的張力の総量(メカニカルテンション)」である。見栄を捨てて重量を20%落とし、ネガティブ動作(下ろす動作)を3秒かけてじっくり耐えるコントロールを導入した途端、停滞していた腕囲が突如として成長を再開する事例は枚挙にいとまがない。