なぜ同じ極地でありながら、これほど極端な気温差が生まれるのでしょうか。その最大の要因は、「大陸」か「海」かという根本的な地形の差にあります。
南極は、日本の国土面積の約37倍にも及ぶ巨大な岩盤の上に、何万年もの歳月をかけて降り積もった雪が圧縮されてできた「氷床(巨大な氷の塊塊)」が乗る大陸です。その氷の平均的な厚さは約2,450メートル、最も厚い場所では4,000メートルを超えます。氷自体の厚みによって大陸全体の平均標高は約2,200メートルにも達し、富士山の5合目以上に相当する高地が大陸全体に広がっている状態です。標高が100メートル上がるごとに気温は約0.65℃低下するため、この高い標高こそが南極を絶対的な極寒の地へと押し上げています。
一方の北極は大陸ではなく、ユーラシア大陸や北米大陸に囲まれた「水深数千メートルの北極海」です。私たちが北極と呼んでいる場所の足元にあるのは陸地ではなく、海水が凍ってできた「海氷」に過ぎません。その氷の厚さは平均して数メートル程度です。氷の下には常に0℃前後の海水が循環しており、海が蓄えた熱が巨大な湯たんぽのような役割を果たして大気の冷却を緩和しています。この海水の保温効果と海抜ゼロメートルという標高の低さが、北極が南極ほど冷え切らない物理的なメカニズムです。