物語の随所に張り巡らされた密やかな伏線と、それに答える見事な伏線回収も本作の大きな魅力だ。物語冒頭で何気なく飾られている一輪の花や、登場人物がふと見せる手元の動き、言いかけた言葉の呑み込み方――その一つひとつが、終盤に向かって大きな意味を持って結実していく。
登場人物の心理描写は言葉によって語られるのではなく、むしろ「沈黙」によって語られる。抑圧された感情が溢れ出る瞬間のまなざしの揺らぎ、背中で語る悲哀の表情は、一品ものの文芸映画にふさわしい深い余韻を残す。伏線を解き明かしながら再視聴することで、キャラクターたちの切なくも気高い選択の意味が明瞭に浮かび上がってくる。