千葉県消防学校の初任科において課される訓練は、単なる体力づくりにとどまりません。ホース延長や放水姿勢を叩き込む「基本操法」、高所恐怖心を克服して命綱一本で渡過する「救助訓練」、そして煙が充満する暗闇を想定した「濃煙熱気検索訓練」など、実際の火災・救助現場を忠実に再現したカリキュラムが組まれています。
訓練内容の根幹をなすのが日々の徹底した体力錬成です。腕立て伏せや懸垂を限界まで繰り返すサーキットトレーニングや、重い防火衣と呼吸器(総重量約20kg)を着装した長距離走など、肉体の限界を試される場面が日常茶飯事となります。
訓練がこれほどまでに厳しい理由は明確です。火災現場は一瞬の判断ミスや体力不足が、要救助者のみならず自身やバディ(相棒)の命を奪う危険と隣り合わせだからです。教官陣があえて極限の負荷をかけ、怒号にも似た指示を飛ばすのは、現場でパニックに陥らない強靭なメンタルと無意識に動ける身体動作を刷り込むための教育的配慮にほかなりません。